おまもりとハンコとコイン

印章の歴史と文化


古代オリエント博物館で行われている【おまもりとハンコとコイン】展に行ってきました。
古代オリエント博物館は池袋サンシャインシティ内にある西アジアやエジプト文明を紹介する国内初の専門博物館です。

今回の企画展は、『古代オリエントの偉大なる小さきものたち』をテーマとした文明発祥期の小さな工芸品にスポットを当てたもので、印章の起源を紐解く興味深い内容でした。


現代確認できる最古の印章は、紀元前6000年頃の石膏に残された痕跡(印影)といわれています。その後、捺印痕がみられる粘土魂が出土し、それらにはヒモやカゴの痕跡などがみられたことから【封印】として重要な物の管理にカギの役割として使用されていたと考えられました。農耕や放牧で得られた余剰生産物を物々交換する文化がおこったことで、この地にハンコは誕生しました。
紀元前5000年頃になると石に刻んだハンコ本体が出土するようになりました。それらの印章は【スタンプ印章】と呼ばれ、初期のスタンプ印章には単純な模様が刻まれていました。やがて複雑な幾何学模様、動物・植物・人物と具象的な文様が刻まれるようになっていきました。
紀元前3500年ごろよりメソポタミア(現イラク近辺)で神殿を中心とた巨大集落(都市)が発展を遂げ、行政管理が徹底していく中で記録をするための文字として楔形文字が整っていきます。その頃になると、スタンプ印章に加えて円筒に刻んだ図形や文字を粘土板に転がして転写する【円筒印章】が誕生します。素材はほとんどが石で、瑪瑙、ラピスラズリなどそれぞれに独自の力があると考えられ、石の種類も重要だったようです。

円筒印章のレプリカ(当店の店頭カウンター内に飾りました)

今回の企画展では、印章の起源といわれる「スタンプ印章」や「円筒印章」などの展示数が多く、小さな印面を拡大して展示していたり、刻字された図柄や文字の意味、封印としての利用方法など、わかり易い紹介がされていました。

今回の展示会で特に興味深く関心を寄せたものは、ハンコの起源と護符(おまもり)の関連性です。とても小さいながら、美しく神秘的な【スカラベ】などの形象印章や護符にとても魅了されました。
スカラベとは、フンコロガシとよばれるコガネムシ科の昆虫で、太陽信仰のあった古代エジプトでは、砂から這い出し糞塊を転がして大きな球体を作るスカラベの生態を太陽神と重ね聖なる甲虫として崇拝し、スカラベをかたどった護符や腹部に図や文字が刻まれた印章が作られました。スカラベ以外の動物などを象った形象印章(スカラボイド)も多数展示されていて、愛らしいものばかりでした。スカラベ・スカラボイド・円筒印章には、共通して小さな穴が空いていて古代人がお守りや装身具として身につけて愛用されていた様子が伺えます。見当違いかもしれませんが、現代人がお守りを身につけたりミサンガなどを願いを込める様子と重なり、願いや祈りを込めて身につける心情は今も昔も共通する想いがあるなぁと親近感を覚えました。

コインの誕生も、ハンコとの関連性を強く感じるものがありとても学びが多かったです。図柄を刻印した印章を金属の塊に打刻して作らる製造方法はまさにハンコの原理が用いられたものですし、金や銀などの重量や純度を保証する役割なども、姿を変えたハンコの進化系であると感じました。
カタログや関係資料、レプリカ品など、たくさん仕入れて参りましたので、しっかり勉強して印章作家としての糧にしていきたいと思います。

古代オリエント博物館
【おまもりとハンコとコイン】展
2023年9月23日(土)〜11月19日(日)

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