
名前に込められた最初の願いを、一生の御守りに。
有限会社スタンプナメカワの3代目店長、一級印章彫刻技能士の滑川裕(なめかわ ゆたか)です。当店では、お客様のお名前のルーツを古代文字(白川文字学)の視点から紐解き、その物語を印章に刻み込むプロジェクトを行っております。今回は、【彫霊(ほりだま)・実印】の制作サンプルとして書き下ろした、幕末の志士「吉田松陰(よしだ しょういん)」先生のお名前解説をご紹介いたします。
偉大な歴史上の人物の名前に、どのような文字の力が宿っているのか。ぜひ一緒に覗いてみてください。

上の2つの印影は【吉田松陰】と書かれています。
実印でよく使われる代表的な書体である「篆書体(てんしょたい)」と「印相体(いんそうたい)」で手書き筆耕しました。
一見難しい篆書体ですが、この篆書体こそがすべての漢字の原点ともいえる格調高き書体です。印相体は、篆書体をベースに文字を八方の枠に広げ安定感をもたせた八方篆書体と呼ばれるものです。
ではなぜ、篆書体はその形になったのか?
漢字の誕生はそこからもさらに時代を遡り、物の形や所作、神への祈り、想い・・・などの意味を象ったルーツや、その音や記号の組み合わせ等、様々な変遷をたどり組み立てられた悠久の物語が存在しています。
■ 「吉田松陰」に宿る悠久のストーリー(文字解説)
漢字が誕生した約3300年前の甲骨文字や金文にまで遡ると、私たちが普段見慣れている文字に、驚くほどドラマチックで神聖な祈りが込められていることがわかります。

【意味・変遷】: 神聖な儀式に用いる鋭利な武器(鉞:まさかり)を表す「士」と、神への祝詞(のりと)を収める神聖な器である「口(サイ)」の組み合わせです。
【象徴】: 神に捧げる大切な祈りの器の上に武具を置き、厳重に守護している様子から成り立っています。いかなる邪気も寄せ付けず祈りが成就する「完全なる守護」と、揺るぎない「幸運(吉兆)」を象徴します。

【意味・変遷】: 区画された農地の形を象る象形文字です。古くは神から授かった神聖な領土を意味しました。
【象徴】: 成果を積み上げ、周囲をも潤す「豊かな包容力」と、決して動じることのない「安定した人生の基盤」を象徴しています。

【意味・変遷】: 「木」と「公」の組み合わせです。「公」は本来宮中の建物を指しましたが、のちに「八(背く=オープンにする)」と「ム(私)」を組み合わせることで、「私心を捨ててみんなのものにする(=私心をなくす)」という意味へと変化しました。
【象徴】: 厳しい冬の寒さでも青々と葉を茂らせる不屈の姿から、すべての木の長とされました。いかなる環境にも屈しない「強い生命力」と「気高い節操」を象徴します。

【意味・変遷】: 神が降り立つ神聖な神座(丘)を表す「阝(こざとへん)」に、光を包み込む様子を表す文字を組み合わせました。
【象徴】: 光の当たらない場所で万物を密かに育む力を表します。人の見えないところでもひたむきに徳を積む「誠実さ」や、神仏からの「目に見えない大いなる庇護」を象徴します。
◇甲骨文(約3300年前): 殷(商)王朝の時代。甲羅に刻まれた文字。
◇金文(約3000年前): 周王朝の時代。青銅器に鋳込まれた文字。
◇春秋戦国篆/古璽(約2500年前): 春秋戦国時代。青銅印。石印。
◇篆文(約2200年前): 秦の始皇帝による文字統一。
■ お名前に込められた物語
これらの文字の力が一つに結びついたとき、「吉田松陰」というお名前には次のような美しい物語が浮かび上がってきます。
そして、人の見えない場所(陰)でもひたむきに誠実な徳を積み重ねることで、完全なる守護と確かな幸運(吉)を自らの手で引き寄せていく。
幕末という激動の時代を駆け抜け、多くの志士たちを育て上げた吉田松陰先生の生き様そのものを表すような、不屈の精神と気高い吉祥の物語が宿っています。
当店では、ご注文をいただいた後、まずはこのように文字の歴史を紐解き、名前に宿る物語を抽出します。そして、その方の人生を盤石に守り抜く「生涯の護符」となりますよう、一本一本、一級技能士の私が魂を込めて印面に文字を描き出し筆耕してまいります。

お客様に納得いただいた上で校了をいただき、彫刻作業に入ります。

製作行程
1.文字を調べる。成立・変遷を調べ、名前に宿る物語を抽出する。
2.調べた文字を解説書にまとめ、印稿を構想する。
3.物語に想いを馳せ、世界で1本のオリジナル印稿を描く。
4.印面を平らに調整し、朱墨を打ち、字割線を引く。
5.字入れ。描いた印稿を逆さ文字にして印面に字入れする。
6.荒彫り。文字を残し朱墨部分を彫刻。5本の印刀で垂直に彫る。
7.再び印面を調整(荒彫りのバリを落とす)、墨を打つ。
8.仕上彫刻。仕上刀で枠や文字の細部を彫り上げる。
9.完成、捺印。

当店最高峰の「完全手彫り印章」の場合は、その工程を示した工程写真を添えて、文字解説書と共に完成ご印章をお届けしております。

■ 店主より:あなたの名前には、どんな物語が宿っていますか?
いかがでしたでしょうか。
印章(はんこ)は、単なる契約の道具ではありません。ご自身の分身であり、社会に対して「これが私です」と存在を証明する大切なものです。
【あなたのお名前の物語、覗いてみませんか?】
「自分の名前なら、どんな意味があって、どんな美しい印影になるんだろう?」
ご興味を持たれた方は、ぜひお気軽にホームページよりお問い合わせ・ご相談ください。一生を共にするパートナーであるご印章を、お客様と対話を重ねながらじっくりと創り上げてまいります。


